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特定非営利活動法人 シビルまちづくりステーション
旧称 ITステーション市民と建設

会報 第6号 東日本大震災の被災地救援・復興支援活動

第6号目次                                           

3、 被災地の苦悩                          佐 藤 健

 平成23年3月11日、東日本大震災という未曾有の大惨事に日本は襲われた。地震、津波、火災そして原発事故と、次々に追い打ちをかけるように降りかかる災難は日本一帯の終焉を暗示させるような恐ろしい出来事が続いた。被災地に生きて(仙台市)直接に津波被害に会うことはなかったものの、この大震災を目の当たりにし、自然の力に襲われたときの人間の無力さを痛感せずにはいられない。津波に襲われた沿岸地域はいずれも想像を絶する破壊の数々、岩手,宮城,福島3県の死者・行方不明者は2万人余に上がる。津波のエネルギーの強さには驚嘆するばかりである。
 東日本沿岸一帯は漁業の町である。カキ、ホタテ、ホヤ、ワカメ、海苔などの養殖も盛んな港町、気仙沼港はサンマの水揚げ日本一、塩釜港はマグロの水揚げ日本一である。これらの港は一様に地盤沈下を起こし、船着場も壊滅的な被害を受けた。流され失った漁船や養殖棚、漁具など・・・漁師は嘆く、もう漁業は続けられない、壊滅状態となった港を見てうなだれた。港の一角にあった水産加工場は土台だけ残してすっかり流されてしまった。一方、「津波で家も家族も失った。この先どう生きて行けばいいのか」、被災者からの悲痛な叫び声が次々と届く。被害を受けた家の再建や修復、仕事、生活、子供の教育・・・ 等では今後の展望も描けず多くの不安や課題を抱える被災者がほとんどである。全てを失い途方に暮れる子育て世代の被災者も多い。「家が流された上、夫は仕事も失った。残ったのは18年もある住宅ローンだけ、3人も幼子を抱えてどうしたらいいのかわからない」と窮状を訴える主婦、全てを無くした人達は今、避難所や仮設住宅で不安を抱えながら暮らしている。
 高齢者の多い被災地では、命からがら避難所に到達するも、その後の環境変化や余震のショック、ストレスによる体調変化などが重なり命を落とした人も何人かいた。両親が死亡または行方不明になった震災孤児が3県で2百人を越えることも判明した。一般の報道では知ることの出来ない辛く悲しいことが語り尽くせない程である。
 被災地では、寄せ集められたガレキの山が日に日に高さを増している。震災後、初めてガレキの山を見たのは名取市閑上の現場である。そのガレキの山には生活の全てが埋もれていた。子供の玩具、本、家電品、ボロボロになった衣服、調度品など、生活の証しが、匂いが、家族の思い出が全て詰まっている。そんな気がして心が傷んだ。
 傷痕深く自粛ムードが蔓延し、暗いことばかりの被災地、光明を見い出すとすれば、苦悩する被災者に対して、日本全国はもとより、海外からの支援活勤や勇気付けに力を注ぐボランテアの人達、機動力を発揮し、ガレキ処理から行方不明者の捜索まで活動する自衛隊、消防、警察など心強いバックアップ態勢で支援活動をする。これが“絆”であろうか、日本国、日本人も捨てたものではない。
 また、あまり知られていないが、震災直後の国土交通省・東北整備局の地道な活動も復旧に向けて大きな役割を果たしていた。人命救助と救援のためのルート確保に向けての道造りである。東日本沿岸を走る大動脈でもある国道45号の使用不可による「櫛の歯」作戦である。内陸の国道4号から沿岸部の被災地に何本かの道路が結ばれている。櫛の歯のように・・・・・・・・・・。
 内陸の道路も地震の影響で、地盤沈下による段差や地割れ、地滑り、倒木などで厳しい状況下にあった。被災地ではガレキや流失してきた車、漁船などで道路は完全に塞がれていた。内陸の道路は応急処置を、被災地では道路を通すためのガレキ撤去を、しかし、カレキの中には被災した人がたくさん混じり、バックホーなどの機械では無理。自衛隊の協力を得ての人海戦術を決行などなど・・・ 救助隊や医療チームをいち早く被災地に投入するための戦いが昼夜を厭わず行われた。失態続きの政府の下、黙々と勇敢に戦った無名の人達の行動を忘れてはならない。
 想定外の津波、災害に強い町づくりを日指して来た南三陸町の佐藤町長は、防潮堤で囲い込む町づくりに限界を感じたと話した。多くの犠牲を伴ったこの度の震災。常識を越えた“まさか”の災害が、永い年月をかけて営々と築き上げてきた故郷の自然、愛する家族を失い、住み慣れた家も失い、会社も職も失った。失ったものは余りにも大きすぎる。地域社会が受けた傷、人々の心に刻まれた痛みが容易に癒えることはない。再生につながる長い道のりを一歩,一歩進むしかない・・・・。
 被災地を巡り、被災地の声を聞いて歩いた震災から3ヵ月の記録である。
                                          (仙台市宮城野区在住)

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