巻頭言 専門的立場で市民と行政の橋渡し 比奈地信雄
創立5周年を機に新規事業「出前講座」 馬場先勝弘
建設関係NPOの連携がスタート 花村 義久
シビルフォーラム(創立5周年記念 第5回フォーラム) 編集部
第4回フォーラムの報告 佐々木順一
支部の活動報告<今年度> 佐々木順一、森川 勝仁、三井信之
支部の活動報告<前年度> 佐々木順一、森川 勝仁
ITステーション「市民と建設」の動き 編集部 (掲載を省略しました)
支部・地区だより 小林 明、 西口 勝持、大脇 清司
編集後記 宮川千助
巻頭言 専門的立場で市民と行政の橋渡し 比奈地信雄
最近「チェンジ」とか「変革」と言う言葉が盛んに使われています。今までの考え方や業務処理の流れを変えるには、新たな力を必要とします。公共事業についても、従来のやり方を見直す必要があると叫ばれ続けていますが、遅々として改善されていないように思われます。新聞やテレビで不要な公共事業が取り上げられ、又その事業の発注業務についてもダーティーなイメージを持たれています。我々土木技術者にとってやり切れない気持ちで一杯です。戦後の荒廃から世界に誇れるインフラを整備した我が国の技術力は、最高水準にあると自負してよいと思います。にも拘らず、公共事業を初めとするインフラ整備に世間の冷たい目が向けられるのは、真にその事業の有効性や必要性が説明出来ていないからではないでしょうか。
最近高速道路やダム、空港等の計画の見直しが行われていますが、この事は計画時点で本当にその事業の役割、効果、影響等を技術的に充分に検討されていなかった事を表していると考えます。計画を策定した技術者は自らの役割を放棄し、諸々の雑音に左右され、近視眼的に公共事業を推進する事のみに邁進したのではないでしょうか。
これからのインフラ整備は、地域住民を始め市民からの合意を得た、市民に恩恵のある構造物を作る仕組みが必要と思われます。今まで政府をはじめ行政機関で策定した計画を住民に説明し、多少の変更は行われてもほぼ計画通り実施されるのが一般的でした。ここに市民の考えと行政の思惑とのギャップが生じる原因があると思われます。
我々のNPO ITステーション「市民と建設」は、行政が策定した計画を専門的立場でチェックし、計画の妥当性や不合理事項、疑問点を指摘するとともに、市民に判りやすく説明することにより市民と行政との橋渡しが出来ればと考えております。その為には、計画策定の根拠になった情報の開示、既成のインフラの客観的評価・実績データの提供等を要求する事が大切と考えます。困難な事象が多々有ると考えますが、勇気と意欲を持って一歩一歩進んで行きましょう。
創立5周年を機に新規事業「出前講座」 馬場先 勝弘
インフラの劣化防止と機能の維持について、地方自治体が管理する道路関係の構造物では、その改善の兆しが見られるとは言えないようです。
インフラを維持するために重要なことは、建設時に品質を保証することと供用期間における適切な管理と保守を行うことですが、小規模の自治体ではこれらに対応できる技術者の数と資金が不足しています。
このような現状を打開するには、設計成果の照査・検収、構造物の点検・台帳の整理等といった自治体が行う業務を、対応できる技術者を数多く有しているNPOが代行できるシステムを構築するのが、人的資源の活用の上からも効率的であると考えられます。
当NPOでは、手始めとして自治体の技術者に対する助言等を行う「出前講座」を立ち上げることにいたしました。
この出前講座は、当NPOが創立(法人化)5周年を機に構想する新規事業計画の一環として行われるものです。新規事業では、建設分野におけるもろもろの資源を、地域の住民・市民団体の身近な生活・まちづくり事業・工事に対して提供しようというもので、その内容は、測量、建設機材提供、コンサルティング、工事指導、出前講座などです。資源の対象は人材と機材などであり、人材面では、専門知識・技能を有するもの、指導を受けて身に付ける意志のあるものを登録して要求に応えるようにし、機材調達に関しては、企業で不要になった測量機器や小規模な建設機材を、CSRの立場から寄贈してもらうことを考えています。
建設関係NPOの連携がスタート 花村 義久
去る9月29日、土木学会会議室で土木関連のNPO5団体が集まりました。名づけてシビルNPO連絡会議(仮)。この分野に関わるNPOの活動・運営の問題点や将来の方向などを議論しながらより発展させるために、土木関連のNPOが連携を図ろうというのが狙いです。
公共事業が中央集権的で広域的な事業から地方分権的でまちづくり的な考え方になっていくに中で、国土づくりやまちづくりにおいて市民参加・協働やNPO活動の役割はさらに重要性を増しています。建設分野でもNPO活動は盛んになってきていますが、その中で土木の分野から見るとその領域が非常に広いにも拘らず、必ずしも活発であるとはいえません。
当初は5団体ですが、今後すでに活動しているNPOが多数参加し裾野が広がるとともに、さらに多くのNPOが生れ、いろいろな分野で新しい問題への取り組みがなされることを期待しています。
この活動は、今年度から当NPO ITステーション「市民と建設」が呼びかけて動き出したもので、この会議でまずはフォーラムを開催し世間に問うことになりました。
このような活動の中から、この分野でも多くのエンジニアや関係者がNPOに参加し、活躍するようなっていくのを願っています。
シビルフォーラム(創立5周年記念 第5回フォーラム)
土木・建設での技術者と各分野のNPO団体が集い、問題点を探り、今後の展望を見出すため
に、フォーラムを開催します。これを契機に、多くの土木技術者、特にベテラン技術者が社会参加をすることによってその能力を発揮し生きがいを感じるとともに、それを実現する場を提供するNPO団体の連携がなされてその活動が一層活発になることを期待するものです。
第4回フォ−ラムの報告 佐々木順一
4回目となります恒例のフォーラムが、平成20年2月23日に「台東区生涯学習センター」を会場として開催されました。
今回は「市民協働による新しいまちづくり」をテーマに、今後ますます地方分権化が進む中、市民生活の多様化・高度化に対しより積極的な行政の対応と向上が求められ、住みよい環境の創造と豊かで安全なまちづくりを実現するため、私たち市民と行政が共に共通の目的を達成するために、市民協働によるまちづくりをどの様に進めるかを講師の皆様の経験も踏まえ、白熱した討議がなされました。
第1部は基調講演、第2部はパネルディスカッションが行なわれましたが、会場は満員状態で熱気に溢れ、関谷先生の基調講演には皆さん熱心に聞き入っておりました。
また、パネルディスカッションではテーマに基づき、今ある現状と問題点そして将来の可能性について、パネラーの皆様の活発な議論がなされ、フォーラムに参加された皆様の大きな関心を呼び、会場からは質問質疑が相次ぎ出され、終了時には会場の皆さんより大きな拍手喝采を受けました。
フォ−ラム終了後に行なわれた懇親会では、参加者と講師の皆さんとの和やかな交流が行われ、盛況のうちに、今回のフォーラムが終了いたしました。
ーーーーー 第4回フォーラム −−−−−
市民参加による国土づくり・まちづくり 〜 市民協働による新しいまちづくり〜
日時 平成20年2月23日( 土)13:30〜16:40
場所 東京都台東区生涯学習センター
対象 まちづくり・市民協働の関係者及び興味のある一般市民・学生
講師 関谷 昇(千葉大学法経学部准教授 法学博士)
パネルディスカッション 「地域の自立と新たなまちづくりを可能にする
市民協働」〜 まちは市民が作るもの〜
パネリスト 関 谷 昇 (千葉大学法経学部准教授 法学博士)
鎌 田 元 弘 (千葉工業大学工学部教授 学術博士)
小 山 淳 子 (NPO法人 CoCoT 副代表理事 まつど市民活動サポートセンター長)
杉 山 敦 彦 (我孫子市環境生活部市民活動支援課主幹)
コーディネーター 花 村 義 久( NPO法人 ITステーション「市民と建設」理事長 )
主催 NPO法人 ITステーション「市民と建設」
関谷先生の講演の様子
支部の活動報告 <今年度>
東日本支部 佐々木順一
昨年発刊しました「関東地域の橋百選」を配布、活用しておりますが、まだ在庫が400部ほどありますので、皆さん活用をお願い致します。ホームページの充実、他のNPOとの交流、浅草地区まちづくり事業への参加を予定しておりましたが、十分な実績を残していない状況です。今後も引続き活動をして行く予定です。
また、恒例のフォーラム支援は今年度も積極的に活動していきます。
関東地域の橋百選 台東区まちづくり大学(浅草まちづくりワークショップ)
西日本支部 森川 勝仁
今年度の活動は、年度始めに下記の項目で計画しました。
@大阪市北区北天満地区の廃校グランドの芝生化によるまちづくり事業
*ビオトープづくりと観察会の実施
池周辺の整備と植物の移植
子どもたちのビオトープ観察会
*校庭開放による芝生グランドの提供
*住民によるスプリンクラーの設置工事の実施
*芝生の維持活動による地域コミュニティづくりの支援
<報告>地域自治会内に「芝生倶楽部」が出来、芝生グランドは地域幼稚園が遠足に来たりしています。春には埋設型スプリンクラー9基を散水工事専門家の指導のもと、自分たちで工事を行いました。タイマー付ですので水撒きが楽になりました。
A助成事業への応募
*大阪市公募提案型事業へ応募「区役所と連携した地域レベルでの住宅の耐震化啓発活動事業」
*全労済 地域貢献事業(子ども分野)へ応募 「地域力でつくろう! 校庭、広場の芝生化作戦サポート隊」
*大阪市北区「区民活動拠点整備事業委託」へ応募
セミナー開催 7回 企業アンケート、ヒアリング調査、 報告書作
予定価格 1100万円
<報告>今年度は昨年に比べ 規模の大きな助成事業に応募しましたが、大阪市事業は2次選考までは残りましたが実績や企画提案不足などで選定してもらえませんでした。また全労災は昨年度の“環境分野”は実績があるのですが、“子ども分野”はハードルが高かったです。
Bポット苗方式による全国芝生化プロジェクトチームへの参加
*鳥取方式(ポット苗方式)による校庭、空地などの芝生化の普及および情報交換を行う。
*生駒市教育委員会と生駒小学校の芝生化に関する契約
<報告>奈良県の生駒小学校の芝生化工事(250u)の契約を行いました。面積が小さいので傷みが激しいのですが、なんとか春までもってほしいと願っています。大阪市内小学校3校のほか京都府、滋賀県内の高校・大学でのポット苗方式の芝生化のサポートを行いました。
数年前に国土交通省の“未知普請 全国大会”でのネットワークがきっかけで大阪府貝塚市の永寿幼稚園の芝生化に際して、芝苗を寄付したことから、副知事や土木事務所長さんたちと一緒に、芝生植えを行いました。
現在 奈良県教育委員会の来年度事業計画(10校 4000万円程度の予算取り)の資料作りやアドバイスのほか、TV報道を見られて問い合わせが数件あり、小学校、幼稚園芝生化やマンションの芝生広場補修計画などの計画支援を行っています。
来年度 数箇所とは事業として契約頂けると期待しています。
生駒小学校移植作業 北天満小スプリンクラー 永寿幼稚園
工事作業 (副知事よりプレートを園児に寄贈)
中日本支部 三井信之
平成20年度の活動は、支部独自の会合、活動ともに十分な展開が出来ませんでした。
平成21年度は、市町村合併後の防災情報の収集と提供を計画しています。
支部の活動報告 <前年度>
東日本支部 佐々木順一
昨年度は念願であった「関東地域の橋百選」を発刊し、関東支部のホームページを更新しました。
また、地域活動の一環として台東区役所を訪問し、新東京タワー建設に伴う浅草地区のまちづくりに関し情報交換を行ないました。台東区主催の「まちづくり大学下町塾」に花村理事長をはじめ3名が4ヶ月間参加し、まちづくりリーダーとして認定証を授与され、他の地元NPOとの交流を深めました。
西日本支部 森川 勝仁
3年前に大阪市北区にて廃校になった小学校校庭を「芝生化大作戦」と称し、地域自治会へ呼び掛けて800uを地域住民参加で芝生化を実施しました。その後、翌年芝生面積を校庭全面積の1200uに拡張し、前年度は同校庭でビオトープ池づくり、校庭キャンプ、防災訓練、野外シアター、餅つき大会などを企画実施しました。
ビオトープづくりに際しては、大阪市環境局へ協力してもらえる専門家紹介を依頼し、北区在住の金下玲子氏を紹介頂きました。金下氏には、地域住民対象のセミナー開催や他校の実施現場の案内、施工指導など大変お世話になりました。その中で 神戸のゴム製品の製作などを手がける企業である“三ツ星ベルト梶hは、ビオトープ池の防水用ゴムシートを神戸市内の小学校に無償で提供されています。
小学校校庭などの芝生化支援活動は、鳥取大学の中野准教授から情報やアドバイスを頂き、大阪市内小学校芝生維持の支援活動を行いました。また 神戸で開催された日本芝草学会全国大会の校庭芝生部会では、関西地域のNPO団体との交流を行いました。
前年度は大阪市ほか3団体から、助成事業に認定いただき終了しました。
(1) 第6回 トム。ソーヤスクール企画コンテスト (安藤スポーツ食文化振興財団)
「都心の中の廃校でのビオトープづくりと芝生の上でのキャンプ体験」
(2)全労済 地域貢献助成事業(環境分野)(全国労働者共済生活協同組合連合会)
「廃校に緑と花と野鳥と昆虫がいっぱい・・みんなでとりもどそうよ・・自然の風景」
(3)大阪市市民活動サポート事業 (大阪市)
「廃校での校庭芝生化活動による防災と環境保全によるまちづくり」
(4)子どもゆめ基金助成活動事業 (独立行政法人 国立青少年教育振興機構)
「廃校の芝生化による異世代交流」
助成金申請は、企画書提出から始まり、1次書類選考、2次プレゼン選考、中間報告書提出、最終報告書または報告会、支出報告書提出など労力を要しましたが、資金支援のほか今後の基盤づくりとNPOとしての事業運営について大変役立ちました。
過去最高の人出 芝生の上での餅つき 校庭キャンプ
支部・地区だより
関東地区: ホームページ担当者からのお知らせ 小林 明
検索エンジンGoogleで「NPO」と入力すると、510万件(日本語ページのみ)ものヒットがあります。当法人もそうですが、財政基盤が脆弱であるNPO法人にとって、少ない費用でも情報発信・交換が可能なインターネットを如何に活用するかは、非常に重要なことです。
ITステーション「市民と建設」では、一般用ホームページ(http://www.itstation.jp/)と会員専用の情報交換ページを活用しています。一般用ホームページには、近日ブログをオープンする予定です。是非、一度お立ち寄りください。
近畿地区: お寺の夜のライトアップ 西口 勝持
京都では冬の恒例となるつつある、各お寺の夜のライトアップが今年も行われています。最新の
発光ダイオードで照らされた境内や寺院は、幻想的な雰囲気を醸し出しています。ただし、底冷えのする京都で、冷たい廊下の上を長々と歩かされるのは少々つらいものがあります。
個人的には、かがり火に照らされたお寺を、年末の「行く年来る年」(最近はNHKしか放送しませんが)で見る方が好きです。これだと、暖かいですものね。
中部地区: 元気な両親 大脇 清司
さて、中部地方は今まで豊田自動車のおかげで元気があるねって言われてきました。私としては、あまり実感がわかなかったんですが。しかし、最近の景気後退で一気に落ち込んだようです。我町でも外国人労働者が解雇され昼間っからぶらぶらしているので治安が悪くなっています。そこで老人クラブ等の人たちが活躍しています。近所の子供たちや町の安全を良くしようと元気に活躍しています。大変ありがたいことです。12月に入ってからは、忘年会などの行事でいっぱいみたいです。この老人クラブに私の両親も参加しています。感謝・感謝です。
元気な、安全な町にするよう我々ITステーション「市民と建設」も参加していくよう努力したいと思います。
編集後記 宮川千助
昨年来の政治、経済の混迷のなか、新年には僅かながらでも光明を見出せたらと願う2009年が明けました。暮れの押し詰まった時期に会報へのご寄稿の依頼を申し上げましたところ、お忙しい中、多くの方から貴重な資料などをお送り下さり有難うございました。
これも暮れの29日、田舎チーム「大分トリニータ」がJリーグ、ナビスコカップで優勝するまでの、社長の苦労と喜びをTVで知りました。田舎から世界を狙う不屈の精神に導かれた選手達、700もの中小スポンサー、それに初戦はたった3人だった観客が今は2万人と完全に地元に根づいたチームは08年J1の4位まで昇りつめました。
西日本支部で実績を実らせた「校庭芝生化大作戦」は、地元の人々の協力を得ながら、環境対策に貢献し、子供たちの楽しみを創造し、見事に地元に根づこうとしています。「芝生化」は東京都にも伝染し、今は78校ですが2016年には2,000校にする計画が発表されました。
地域を、地元を大切にする運動はこれから地方に確実に拡がって行くでしょう。われわれNPO「市民と建設」も、志を同じくするNPOや地域と連携し、これらの運動に協力して行きましょう。